我が国の保険診療での根管治療の成功率は、」統計上50~30%と言われています。
つまり10本の歯の根管治療をすると、5~7本がうまくいかないということになります。
根管治療は、初回治療つまり抜髄(ばつずい:歯の神経を取ること)での治療の成功率が最も高く、再治療になると有意に成功率が下がります。
特に、根尖(歯根の先端)が破壊されているものでは成功率が大きく下がり、その成功率は自費診療でさえ40%程度と考えられています。
初診時レントゲン。歯の痛みと歯茎の腫脹を主訴に来院。すでに根管治療がされており、根尖部までしっかりと薬が詰まっている。再治療を繰り返し行ったため、根管はかなり太く削られていて歯質が薄く、歯根破折やひび割れのリスクは高い。根尖部には黒い大きなレントゲン透過像を認める。このように、しっかりと根管充填されているにも関わらず根尖病巣が治癒しないものは、再根管治療を行っても成功率が低いことが統計上明らかである。
初診時CT画像。根尖部までしっかりと薬が詰まっているのが分かる。治療法は2通り。➀再根管治療を行い、予後が悪ければ外科的歯内療法(嚢胞摘出もしくは歯根端切除・逆根管充填)を行う②再根管治療は行わず、はじめから外科的歯内療法(歯根端切除・逆根管充填)を行う。まずは再根管を試みることとした。
術中レントゲン。古い根管充填材を完全に取り除き、歯根の長さと方向を確認する。小指の爪ほどの大きさの病巣(骨吸収)を認める。
根管充填直後レントゲン。根尖までしっかりと薬が詰まっているのが分かる。何回か根管洗浄・消毒を行うものの、歯茎の腫脹および根管からの排膿が完全に治まらなかったため、可及的に膿を吸い取って洗浄・消毒を行い、根管充填を行った。同日に歯根嚢胞と思われる根尖病変を外科的に切除・摘出した。
根管治療1年後レントゲン。根尖部の黒い透過像はほぼ消失し、根尖病巣が治癒しているのが分かる。根管治療で治癒しない根尖病巣は、歯根端切除をせずに病巣を切除・摘出するだけで治癒するケースもある。
同CT画像。根尖病巣が治癒し、歯槽骨が再生しているのが3次元的にも分かる。
根管治療の治癒率は、専門医が行っても100%ではありません。
特に再治療での成功率は有意に低くなるため、外科的歯内療法の併用が有効です。
専門医が行うマイクロスコープを使用した歯根端切除・逆根管充填の成功率は、90%以上であり、成功率が非常に高いことが分かっています。
しかしながら、根尖病巣を外科的に切除・摘出するだけで、歯根端切除・逆根管充填を行わなくても治癒するケースもあります。
患者さんの意向をくみ取りつつ、どのように治療計画を組み立てていくのか、難しい症例こそ歯科医師の知識や技量が試されるのです。
治療費用:精密根管治療 前歯¥77,000
根尖掻爬(ソウハ)、嚢胞摘出¥22,000
治療期間:2か月
治療上のリスク;根管治療および外科的歯内療法の成功率は100%ではありません。治療により、一時的には茎の腫れや歯の痛みを生じることがあります。