根管治療は、歯科治療の中でも最も難しい治療のひとつです。
特に上顎大臼歯の根管治療は非常に難易度が高い治療です。
通常、歯根が2~3本存在し、根管(神経の入った管)が3~4本存在しています。
歯根や根管の湾曲が強いものも少なくなく、ファイル(細い治療器具)の破折やパーフォレーション(穿孔;歯根に穴を開けてしまう)のリスクが高い歯が多いのです。
それに加え、上顎臼歯部は視認性と器具の到達性が悪く、患者さんの開口量によっては器具が下顎の歯に当たり治療が困難な場合も少なくありません。
保険診療の根管治療は、治療の難易度に対して保険点数が極めて低く、治療に時間と労力を割くことができませんし、コストに見合った材料や器具しか使うことが出来ません。
その結果、根管治療はなかなか進まず半年一年と治療をダラダラ続け、根管治療した歯の予後が悪く治療のやり直しを繰り返すこととなります。
初診時レントゲン。右側上顎第一大臼歯の疼痛と歯茎の腫れを主訴に来院。コンポジットレジンによって、歯髄(しずい)に近接した虫歯治療がされている。
初診時CT画像。根尖部(こんせんぶ;歯根の先端)には根尖病巣による黒く丸いレントゲン透過像を認める(黄⇒)。根尖病巣が上顎洞に近接しているため、上顎洞の内部に白いレントゲン不透過性の炎症所見を認める(赤⇒)。歯髄壊死による根尖病巣(慢性根尖性歯周炎)および歯性上顎洞炎と診断し、根管治療を行うこととした。このようなケースは、根管治療がうまくいかなければ上顎洞炎が増悪し、抜歯に至る。
根管充填後レントゲン。歯の痛みおよび歯茎の腫れが改善したため、根管充填を行った。4つの根管に根管充填されているのが分かる。
根管充填後CT画像。根尖部までしっかりと白い薬が充填されているのが分かる。根尖病巣による根尖部の黒いレントゲン透過像は縮小してきており(黄⇒)、上顎洞の炎症も治癒してきているのが分かる(赤⇒)。
治療1年後。何も症状はなく順調に経過している。
治療1年後CT画像。根尖部にあった黒いレントゲン透過像および上顎洞内の白いレントゲン不透過像は消失し、根尖病巣および歯性上顎洞炎は完全に治癒している。保険治療では決してこのようにはいかない。
根管治療は、一番初めの治療(抜髄;ばつずい、神経を取ること)が最も成功率が高く、再治療(治療のやり直し)は難易度が高く成功率が顕著に低下します。
したがって、根管治療を受ける際は、最初から保険ではなく自費での治療を受けるべきで、その方が治療後の歯の予後は良く、長くご自身の歯で過ごすことが出来るでしょう。
自費での治療は確かにイニシャルコストがかかりますが、歯がダメになって将来抜歯になり、ブリッジやインプラントになることを考えると、トータルコストは抑えることが出来ます。
普段は気付きもしませんが、何よりもご自身の歯で不自由なく食べられることは、とても幸せなことではないでしょうか?
治療費用:精密根管治療(大臼歯)¥99,000
ファイバーコア¥22,000
オールセラミッククラウン¥132,000
治療期間:3か月
治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。神経を失った歯は将来歯根破折を生じるリスクがあります。