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カテゴリ: 根管治療

根管治療におけるファイル破折片の除去

根管治療では、ファイルやリーマーと呼ばれる針状の非常に細い器具で根管の中を清掃・拡大します。

歯の神経の入った根管は非常に細く、また湾曲していることが多いため、稀にファイルやリーマーが金属疲労で破折してしまうことがあります。

もちろん、治療はとても慎重に行いますが、それでも破折を起こすことがあります。

 

初診時レントゲン。右側下顎第一大臼歯の被せ物(クラウン)は外れており、虫歯と根尖病巣を認める。近心根にはファイル破折片を認める(矢印)。根尖病巣を認めるため、可能であれば破折ファイルを取り除きたいケース。

 

根管治療中。古い根管充填剤(白く写っている薬)と取り除き、近心根にあったファイル破折片を超音波にて除去した。これで根管の先端まで完全に清掃・消毒することが出来る。

 

根管充填後。症状緩解後、バイオセラミックシーラーとガッタパーチャポイントによる根管充填を行った。歯根の先端までしっかりと根管充填されているのが分かる。

 

根管にきつく食い込んだファイルや、湾曲した根管で破折しているファイルは取り除くことが出来ない場合が多いです。

無理に取り除こうとすると、新たにファイルを折り込んだり、本来の根管と違うところに穿孔(パーフォレーション)を起こすリスクが高いです。

根尖病巣が無く、根管内に残っているファイルが感染源になっていないと判断されるものは、必ずしも取り除く必要はありません。

あくまでも、歯の寿命を考慮した診断と治療計画が重要となるのです。

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日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療

虫歯治療のあとに痛みや歯茎が腫れる原因はこれだ!~歯髄壊死~

虫歯治療を受けた後に、歯が強くしみたり、痛みや咬合痛、歯茎の腫れを生じることがあります。

視診で歯の神経(歯髄)まで虫歯が到達していない場合でも、不顕性露髄(ふけんせいろずい)や虫歯治療の刺激で歯髄炎(しずいえん)が生じることがあります。

不顕性露髄とは、一見虫歯が歯の神経に到達していないように見えるものの、感染歯質が歯髄にまで達しており、歯髄の細菌感染が生じている状態を指します。

歯髄炎は徐々に進行し、やがては歯の神経が死んでしまいます。これを歯髄壊死(しずいえし)と呼びます。

患者さんは、虫歯治療をした歯が痛むということは理解できないかもしれません。

しかしながら、実際の臨床では虫歯治療後に痛みを生じることはしばしば遭遇します。

これは、歯髄をなるべく温存したい、神経を取りたくないという歯科医師や患者さんの思いによるものです。

例え、もともと痛みや症状のない虫歯であったとしても、深い虫歯の治療後には、歯髄炎を惹起する可能性は常に存在するのです。

これは、例えMTAセメントなどを使ったとしても、避けることは出来ません。

したがって、当院では術前に虫歯が深いと判断したら、根管治療が必要になる可能性を予め説明するように努めています。

 

初診時。下顎左側第一大臼歯の痛みと歯茎の腫れを主訴に来院。歯には咬合痛と動揺も存在する。歯には大きな銀歯が詰めてある。

 

初診時レントゲン。虫歯治療で大きな詰め物が装着してあり、深い虫歯があったことがうかがえる。歯根の周りは骨吸収が起こり、歯髄壊死から継発した根尖病巣を生じている。根管治療が必要な状態。

 

根管治療中。ファイルを根管に挿入し長さと方向を確認。

 

根管治療後レントゲン。根管内を完全に清掃拡大・洗浄し、痛みや歯茎の腫れが消失したことを確認後、根管充填を行った。歯根の先端まで薬がしっかりと詰まっていることが分かる。

 

治療後。根管治療後、オールセラミッククラウンにて歯冠補綴を行った。痛みと歯茎の腫れは完全に消失し、しっかりと噛めるようになった。審美性も非常に良い。

 

虫歯が大きく、深くなってしまうと、例え痛みが無くても歯髄炎や歯髄壊死を生じるリスクが高まります。

このようなことにならないためには、定期的な検診により、早期発見と早期治療が重要です。

しかしながら、もっとも重要なことは、虫歯にならないように常日頃からセルフケアをしっかりと行うことです。

甘い飲食物が氾濫している現代では、歯ブラシだけでは虫歯や歯周病は予防は出来ません。

必ずデンタルフロス(糸ようじ)を併用することをおすすめします。

 

治療期間:2か月

治療費:精密根管治療¥77,000

ファイバーコア¥22,000

オールセラミッククラウン¥110,000

治療上のリスク:根管治療の成功率(治癒率)は100%ではありません。根管治療中は一時的に痛みや歯茎の腫れを生じることがあります。

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根管充填に使用する薬剤について(根の中に詰める最終的な薬)

根管治療は、歯の神経の治療のことです。

虫歯が深く大きくなり、歯の神経(歯髄;しずい)にまで達すると、強くしみたり、痛みを感じるようになります。

さらに、深く大きな虫歯を放置すると、歯の神経が死んで(壊死;えし)腐敗してしまいます。

また、一度根管治療を終えた歯でも、根管治療が適切にされていないと、歯根の先端に炎症が生じ、慢性根尖性歯周炎(根尖病巣、歯根肉下種、歯根嚢胞など)を引き起こします。

このような場合にに根管治療が必要になります。

 

根管治療では、歯根の中になる根管と呼ばれる非常に細い神経の管(根管)を完全に機械的に拡大し、EDTAや次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液にて十分に洗浄し、内部のバクテリアや腐敗した歯髄組織、プリデンティン(象牙前質:幼弱な象牙質)などを徹底的に取り除きます。

清潔になった根管は空洞となり、このままでは再びバクテリアの温床になるため、根管を薬剤にて完全に密封する必要があります。

この作業を根管充填(こんかんじゅうてん)と呼びます。

 

根管充填で使用される薬剤(根管充填剤)には、ガッタパーチャと呼ばれる樹脂様のものとシーラーと呼ばれる練り薬で、多くの場合このガッタパーチャとシーラーを併用して根管充填を行います。

シーラーには多くの種類が存在し、酸化ユージノール系、非ユージノール系、レジン系、シリコン系、水酸化カルシウム系、ケイ酸カルシウム系(MTA)などがあります。

それぞれ特徴や薬効が異なり、ケースにより使い分けをします。

根管充填剤のシーラーとして近年注目されているのは、生体親和性が非常に高く、強アルカリ性で抗菌性を維持できるバイオセラミックスです。

その特徴は

●PH11~13と強アルカリで抗菌性がある

●硬化時にわずかに膨張するため、緊密な充填が可能

●レジン成分やビスマス、ユージノールなどを含まず、生体適合性が高い

 

当院では、精密根管治療にBRASSELER USA社のEndoSequence BC SealerおよびAngelus Japan社のBio-C Sealerを使用しています。

他の種類のシーラーと比べて根管充填後の痛みは少なく、予後は非常に良好です。

ただし、健康保険の非適応で非常に高価な薬剤となります。

 

BRASSELER USA社のEndoSequence BC Sealer

 

Angelus Japan社のBio-C Sealer

 

バイオセラミックスであるEndoSequence BC Sealerによる根管充填。根尖まで緊密な充填がなされている。

 

最善の治療を行うためには、適材適所で最適な材料や薬剤を使用することが必要です。

多少コストがかかりますが、より良い予後を得るためには、そして歯を長く持たせるためには、何より健康には代えられません。

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根管治療のよくある質問「保険と自費は何が違うのですか?」

根管治療での質問でとても多くいただくものに「保険と自費の根管治療は、何が違うのですか?」というものがあります。

結論から言うと、「何もかもまったく違う」とお答えします。

 

まず、大前提として、虫歯や根管治療などの歯の治療は、基本的には技術的な介入が必要な外科的処置です。

技術・手技の良否が、治療の予後に決定的な影響を与えます。

特に歯の神経の治療である根管治療は、歯の治療の中でも技術的に最も難しい治療のひとつなのです。

保険の治療では、治療したこと自体が保険点数として評価され、治療の内容はまったく勘案されません。

しっかりと治療をしても、そうでなくても、保険点数の評価は同じです。

しっかり治療をしようと思えば、当然、時間がかかりますし、器具や薬剤などのコストもかかります。

したがって、しっかりやってもやらなくても評価が同じとなると、結果は低きに流れてしまうのです。これは人間の相と言えるでしょう。

この点、自費の根管治療では、治療の技術、内容がまったく異なるのです。

根管の拡大、洗浄、消毒から薬剤の充填にいたるすべての治療工程において、妥協をせずに治療を行います。

治療にかかる時間、使用する薬剤などの制約は一切ありません。

より良い予後を得るために、あらゆる手段・手技を講じる、これが自費の根管治療なのです。

 

初診時レントゲン。歯の神経が取って被せてあるものの、根管治療は不十分で、歯根の中に薬がまったく入っていない。幸い根尖病巣は存在しない。このような治療でも、健康保険では診療報酬が満額支払われる。歯根の内部に黒い空洞が存在していることから、内部には多量のバクテリアや腐敗物質が存在している疑いが強い。

 

ファイル(治療用の器具)を試適し、根管の長さや湾曲を確認する。根管内が石灰化していたが、歯根の先端まで無事穿通できた。

 

根管充填後。歯根の先端までしっかりと緊密に白い薬が詰まっているのが分かる。これで安心して歯を被せることが出来る。

 

多くの患者さんが誤解しているのが、CTやマイクロスコープです。

これらを使う治療が自費治療で、使えばきちんと治療ができているだろうというものですが、それは幻想にすぎません。

これらを使用して治療をしたものの、根管に薬がきちんと詰まっていないケースも多く見ます。

治療器具は、術者がどう使うかということが重要であり、正しい診断、正しい技術があってはじめて高度な根管治療が可能となるのです。

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治療した歯の歯茎が腫れるのはなぜか?~根尖病巣による歯茎の腫れ~

治療した歯の歯茎の腫れを主訴に来院する患者さんは非常に多くいます。

このような場合、問診だけで歯の状況をある程度推測すること可能です。

歯茎が腫れる原因の多くは

 ①根尖病巣(慢性根尖性歯周炎;根の先の炎症)

 ②歯の破折やクラック(ひび割れ)

 ③歯周病(慢性辺縁性歯周炎)

 ④穿孔(パーフォレーション;歯根に穴が開いている)

のいずれかです。

 

歯周病で歯茎が腫れる場合には、歯根を支える歯槽骨の吸収が進んでいるため、同時に出血や歯のぐらつき、動揺などの症状も伴います。当然ながら深い歯周ポケットも存在します。

 

歯の神経の治療のことを根管治療と言いますが、根管治療は非常に繊細で難しい治療であるため、日本の保険の治療で正しく行われていることはあまりありません。

根管治療が正しく治療されていないと、歯の内部でバクテリアが繁殖し、やがて根尖病巣を生じるようになります。

根尖病巣は、慢性化すると難治性の歯根肉芽腫や歯根嚢胞(しこんのうほう)へと進行するので、早期に治療を受ける必要があります。

初診時。歯茎の腫れを主訴に来院。他院で抜歯と宣告されたが、抜歯せずに治療できないかを相談にみえた。歯周ポケットが存在しないことから、歯周病は否定された。

 

初診時レントゲン。すでに根管治療がしてあるものの、根管充填が不十分。根尖(歯根の先端)から歯根分岐部(歯根の股の部分)にかけて、骨吸収による黒いレントゲン透過像を認める。歯根のクラックやパーフォレーションも疑われた。

 

診査を兼ねて根管治療を行うこととした。クラックやパーフォレーションは存在せず、根管治療で治癒する可能性が高いと判断した。

 

根管充填後。歯茎の腫れは消失し、疼痛や排膿、打診痛、咬合時痛などの症状が無いのを確認し根管充填を行った。根尖までしっかりと薬が詰まっているのが分かる。

 

治療後。ファイバーコアにて支台築造し、オールセラミッククラウンにて補綴(ほてつ)を行った。補綴に先立ち、全顎に対し歯周病治療としてSRP(ルートプレーニング)を行い、歯周組織の改善を同時に行った。

 

歯の治療、特に根管治療はやり直しが非常に多い治療です。

やり直しの治療は成功率が有意に下がるため、費用が掛かっても最初からきちんと治療を行った方がかえって治療費を抑えることができ、自分の歯を長持ちさせることが出来ます。

根管治療が必要になった場合には、経験豊富な歯科医師のもとで治療を受けることがとても重要です。

治療期間:2か月

治療費:精密根管治療¥77,000

    ファイバーコア¥22,000

    オールセラミッククラウン¥110,000

治療上のリスク:根管治療の成功率(治癒)は100%ではありません。根管治療中は一時的に痛みや歯茎の腫れが生じることがあります。

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歯髄壊死を放置すると、大きな根尖病巣に発展する!~歯髄壊死の治療はお早めに!~

大きな虫歯が出来ると、冷たいものや熱いものがしみたり、痛みを生じるようになります。

この状態を放置すると、歯髄(歯の神経)に細菌感染が生じ、やがて歯髄の活性が失われて壊死(えし:死んで)していきます。

歯髄が壊死すると、壊死物質やバクテリアが歯根の先端から漏れ出して、やがて歯槽骨を溶かして根尖病巣を形成していきます。

最初は小さな根尖病巣でも、時間が経つにつれ徐々に大きくなり、やがて難治性に発展します。

 

初診時レントゲン。歯冠部にコンポジットレジンによる大きなレントゲン不透過像(白い像)を認め、根尖部(歯根の先端)には根尖病巣によるレントゲン透過像(黒い像)を認める(矢印)。

 

根管内にファイルを挿入し、歯根の方向と長さを確認する。根尖病巣がかなり大きかったため、頻回の根管洗浄・消毒にも関わらず排膿が止まらず、歯茎の腫れや痛みを何度も繰り返した。

 

根管充填時レントゲン。根尖まで白い薬が緊密に充填されているのが分かる。痛みや違和感、排膿の消失に6か月もの長期間を要した。病状が悪くなってからの治療には、一般的に長期間を要するようになる。

 

根管治療5か月後。根尖部のレントゲン透過像(黒い像)がかなり縮小しており、治癒が進んでいることが分かる(矢印)。

 

初診時CT画像。根尖部に大きな黒いCT透過像を認める(矢印)。透過像は歯槽骨の破壊の大きさを示しており、親指の爪の大きさにも匹敵している。正確な診査・診断には、やはりCT撮影は欠かすことが出来ない。

 

治療5か月後。根尖部の黒いCT透過像が著しく縮小していることが分かる(矢印)。適切に根管治療が行われれば、難治性の根尖病巣であっても、破壊された歯槽骨は再生してくることが分かる。適切な根管治療を行うことが、歯の寿命を延ばし、抜歯のリスクを回避するために極めて重要となる。

 

歯髄壊死を生じた場合には、早期に適切な治療を受ける必要があります。

放置すると、歯の変色が酷くなるだけでなく、根尖病巣が大型化し難治性となって抜歯へと至ります。

歯を失わないためにも、早期発見・早期治療は重要なのです。

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4根を持つ上顎第二大臼歯の根管治療は、究極的に難しい!

上顎の第二大臼歯(一番奥の歯)の歯根は、通常3本である3根ケースが多く、3本のうちの2本がくっ付いて癒着した2根がそれに次いで多いです。

さらに3本とも癒着したもの、あるいは1本のものなど、バリエーションも豊富です。

しかしながら、時には4本の歯根を持つものもあります。

一般的に、1本の歯根の中には1~2本の根管(神経の管)があり、歯根の数が増えるほど根管治療の難易度は高くなります。

しかも、奥に行けば行くほど見えにくく、器具も届きにくくなるため、その難しさは想像をはるかに超えます。

これをきちんと正しく根管治療を行うためには、かなりのトレーニングと経験が必要になるのです。

 

初診時レントゲン。第二大臼歯を他院で治療をしたが痛みが治まらず来院。根管充填してあるが(白く写っている薬)、歯根の先端まで入っておらず不十分であることが分かる。根管治療は、再治療の方がさらに難易度が高くなる。レントゲン上では歯根は3本に見えるが、実際にはCT撮影にて4本の歯根を確認した。

 

根管治療後レントゲン。4根4根管の上顎第二大臼歯。再根管治療後、術前の痛みは完全に消失した。歯根の先端まで白い薬が緊密に美しく充填されていることが確認できる。このような治療をするには強い精神的緊張を伴い、術者も胃が痛くなることが度々。

(治療費:精密根管治療¥77,000、治療回数3回、治療によるリスク:根管治療の成功率は必ずしも100%ではありません。神経の無い歯は、将来的に歯根破折を起こすリスクが高くなります。メインテナンスをきちんと行わないと、虫歯が再発することがあります。)

 

歯の治療は、一般の方が考えている以上にとても難しい治療です。

正しい治療を行おうとすればするほど、手間も時間も、そして費用もかかります。

ですから、治療をしなくても済むように、日ごろのメンテナンスや定期的な検診がとても大切なのです!

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鼻の横を押すと痛む原因はこれだ!~犬歯の根尖病巣~

時々、鼻の横(鼻翼の付け根)を押すと痛みや違和感があるというケースがあります。

副鼻腔炎(上顎洞炎)でもそのような症状が出ますが、一番疑わしいのは上顎の前歯、特に犬歯の根尖病巣が疑われます。

上顎の犬歯の根尖(こんせん;根っこの先端)は、ちょうど鼻の横の辺りにあります。

したがって、犬歯に根尖病巣(こんせんびょうそう;根の先の炎症)が出来ると、顔の表面から指で少し強めに押すと痛みを感じるのです。

根尖病巣は、重度の虫歯や外傷による歯髄壊死(しずいえし)、不適切な根管治療(歯の神経の治療)などで生じます。

レントゲンを撮影して診査することで、鼻の付け根の痛みの原因が歯にあるのか否か、ほとんどが診断可能です。

 

初診時レントゲン。右の鼻の付け根を押したときの痛みを主訴に来院。右側上顎犬歯は神経を取ってあり、補綴物(被せ物)が装着してある(白いレントゲン不透過像)。根管治療が不十分で、歯根の先端に骨の吸収を疑わせる黒いレントゲン透過像を認める(根尖病巣)。

 

同部のCT画像。根管(根の内部)には白い根管充填材を認めるが、根尖(歯根の先端)まで詰まっておらず不完全な治療の状態であるのが分かる。根尖部には、根尖病巣による黒いレントゲン透過像を認める(矢印)。これが鼻の横を押したときの痛みや違和感の原因となる。この症状の改善には、根管治療を正しくやり直す必要がある。

 

ファイル(治療用の細い器具)を歯根の内部に挿入して、根管の長さと方向を確認しているところ。根尖までファイルが届いているのが分かる。

 

根管治療後。白い薬が歯根の先端までしっかりと緊密に充填されているのが分かる。適切な根管治療を行うことで、鼻の横の痛みは完全に消失した。

 

根尖病巣は、放置すると徐々に大きくなり、難治性になっていきます。

基本的に、様子を見ていても根尖病巣は治癒することはないため、治療は早めに行った方が得策でしょう。

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根管治療で分かる歯科医師の技量とモラル

現在、歯科医師は大学を卒業して国家試験に合格すると、厚生労働省の指定する臨床研修施設で1年間の研修が義務付けられています。

私が卒業した当時は、歯科医師のライセンスを取得すると、すぐに患者さんの治療をすることが出来ました。

しかし、卒直後の若い歯科医師にきちんととした治療が出来るはずもなく、治療説明も十分には出来ませんでした。

より高度な治療がしたいと思い、当時自由診療だけしかしていない歯科医院に勤務させていただきました。

その歯科医院では、多少の臨床経験があっても新卒と同様の待遇(治療はさせてもらえない)でしたし、指導は厳しいといわれました。それでも指導について来れるかと問われたのを、今でもはっきりと覚えています。

しかし、とにかく正しい治療を勉強したい一心で、その歯科医院の門を叩きました。

診療時は、とにかく院長先生の治療をへばりつくように近くで見学し、診療時間後には毎日深夜まで抜去歯牙を使って歯を削ったり、根管治療の練習をしていました。

今思えば、院長先生の周りを常に若い歯科医師が2~3人、歯科衛生士や歯科助手が2~3人取り巻いて見学していたので、患者さんもさぞ驚いたことでしょう。

それが可能だったのも、すべては患者さんの院長先生への絶大な信頼とカリスマ性によるものでした。

この日々が非常に充実していて、とても楽しかったのを覚えています。

 

ここでの治療で一番力を入れていたのは根管治療でした。

全ての歯の治療のメルクマールとなるのが根管治療で、これがきちんと出来れば他の治療も問題なく出来るという考えに基づいていました。

日夜、抜去歯牙を使って根管治療の練習をしては、レントゲンを撮って院長先生に見てもらい、厳しく指導をしていただきました。

それから20年以上経った今でも、ここでの根管治療に対する真摯な考えが、現在の診療の礎となっています。

「自分の家族にしても大丈夫な治療をしなさい!」

これが、私が勤務時に院長先生から言われた言葉であり、自分のした治療に納得がいかなければ、治療のやり直しをさせていただくこともありましたが(もちろん費用を頂かずに)、それを咎められたことは一度もありませんでした。

 

根管治療は、治療に要する手間や難易度の割に診療報酬が低く、保健診療において不採算部門の代表格となっています。

しかしながら、根管治療をきちんと行わなければ、いずれ歯根の先端に炎症を起こし、根尖病巣を生じてしまいます。

根尖病巣は無自覚のうちに大きくなることが多く、放置すれば歯は抜歯を余儀なくされます。

したがって、根管治療は歯を救う手段として極めて重要な治療なのです。

根管治療をしっかりと行えば、治療に時間がかかり経営を圧迫しますが、治療した歯は快適に長く機能することが出来ます。

ここに、歯科医師の技量とモラルの両方を見て取ることが出来ると教育されてきましたし、現在でもその思いに変わりはありません。

ですから、良くない根管治療を見るとすごく気分が悪くなるのです。

 

上顎前歯の初診時レントゲン。補綴(ほてつ;被せ物)が入っているが、根管には薬が全く見られず、根尖部には根尖病巣による黒いレントゲン透過像を認める。根管内部が腐敗していることは容易に推察される。患者さんのことを考えると心が痛む。

 

治療中のレントゲン。根管内にファイル(治療用の細い器具)を挿入し、根管の長さと走行を確認する。

 

根管充填後レントゲン。歯根の先端まで白い薬がしっかりと詰まっているのが分かる。根管治療が正しく行われれば、徐々に根尖部の破壊された骨は再生し、根尖病巣は治癒する。

 

根管治療は、患者さんが直接肉眼で確認できず、不具合も治療後すぐには表れないことが多いため、患者さん自身が治療の良否を判断することが非常に難しい治療です。

だからこそ、歯科医師の技量とモラルが問われる治療なのです。

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大きな根尖病巣でも、適切な根管治療を行えば治る!

歯科治療で頻度の高い根管治療。

根管治療は、歯の内部の、もともと神経のあった部分の治療のことを指します。

虫歯で痛みを生じるようになると、この神経を取らなければ痛みが取れません。

したがって、根管治療は虫歯治療の延長線上にあり、歯科治療の中ではとても頻度の高い治療です。

 

この根管治療は非常に繊細で難しい治療です。

歯の根っこである歯根の中には、もともと神経が入っている根管と呼ばれる管があります。

この根管は非常に細く、そしてしばしば湾曲しているため、きわめて繊細な手技が求められます。

治療に繊細さが欠けると、器具の破折を起こしたり、歯根に穴をあけたり(パーフォレーション)してしまうのです。

また、根管の内部をしっかりと清掃・消毒をし、隙間なく緊密に薬を詰めないと、後々内部で腐敗を起こし、歯根の先端に炎症を生じてしまいます(根尖病巣)。

 

初診時レントゲン。根管治療をしてクラウンを被せてあるものの、根管治療が正しく行われていないために歯根の先端部の骨が溶け、根尖病巣を生じている(黒い部分)。

 

根管の中にファイルと呼ばれる器具を挿入し、根管の長さと方向を確認しているところ。歯根の先端で器具がぴったりと止まっていることが分かる。

 

根管充填後。白いのが根管充填材(薬)。歯根の先端までしっかりと薬が詰まっているのが分かる。根管内部が適切に清掃・消毒され、隙間なく薬が詰められれば、ほとんどの根尖病巣は自然治癒する。抗生剤の内服だけでは、根尖病巣は根本的に治癒はしない。

 

根管治療5か月後、治療終了時。歯根の先端にあった黒いレントゲン透過像は完全に消失し、根尖病巣は治癒した。

 

根尖病巣が出来ているということは、被せてあったり、詰めてある歯の内部が腐敗していることを意味しています。

これを放置すると、根尖病巣が大きくなることはもちろん、歯の内部から虫歯が進行していずれ歯がダメになります。

したがって、痛みや歯茎の腫れが無かったとしても、根尖病巣のある歯は根管治療を正しくやり直す必要があるのです。

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