〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-3-12 バンセイ室町ビル2F
【診療時間】月〜金 10:00-14:00/15:00-18:30
      土 10:00-13:00/14:00-17:00
【休診日】日曜・祝日

お電話でのご予約は


※お急ぎの方はお電話ください。

カテゴリ: コラム

歯周病による歯列不正~歯周病でも矯正治療は可能か?~

歯周病は、歯を支える歯槽骨が溶ける病気です。

初期症状としてまず歯肉の腫脹や出血が起こり、やがて歯槽骨の吸収が進むと歯の動揺(ぐらつき)やフードインパクションン(食片圧入;食べ物が詰まる)、そして歯の移動に伴う歯列不正や咬合痛を生じるようになります。

歯周病が進行して歯の動揺が強くなると、歯はいろいろな方向に移動するようになります。

その結果、すきっ歯や乱杭歯(叢生)、出っ歯(前突)など様々な歯列不正を引き起こし、しばしば審美的機能的に問題となります。

では、歯周病になってしまうと、この歯列不正は改善するすることは出来るのでしょうか?

結論からすると、きちんと歯周病を治療して管理し、歯のぐらつきが酷くなければ矯正治療を受けることは可能です。

 

矯正治療前口腔内。歯周病により歯列不正を生じた30代女性。歯周病が進行していたため、全顎的な歯周初期治療および歯周外科処置(フラップ手術)を行った。右側下顎第一大臼歯は保存不可能であったため抜歯となった。上下前歯部は叢生(乱杭歯、クラウディング)を生じ、審美的にも機能的にも問題がある。歯列矯正を行うと、口腔内清掃が難しくなるため、治療前に正しいブラシイングの方法と習慣をきちんと身につけておく必要がある。また虫歯や根尖病巣がある場合には、矯正治療に伴い病状が進行するため、あらかじめ治療を済ませておく。

 

歯周病による歯列不正の矯正治療後。上下前歯部の叢生は改善し、左右対称の美しい歯列になった。欠損していた右側下顎第一大臼歯は、インプラントにて欠損補綴を行った。歯周病の矯正治療後では、歯の支持歯槽骨の減少により歯並びの後戻りを生じやすいため、厳密に長期間保定を行う必要がある。本症例ではワイヤー(FIX)にて保定を行った。

 

歯周病に罹患し、歯並びが悪くなって悩んでいる方は少なくないと思います。

歯周病であっても、歯列矯正を行うことは可能です。

歯列矯正を受けるには、虫歯、歯周病、歯の欠損などあらゆる口腔内の問題を改善しておく必要があります。

したがって、一般歯科医との連携は不可欠です。

また、歯周病の方の場合、歯をマイルドに優しい力で動かす必要があるため、治療期間が長くなる傾向があります。

矯正治療を受ける際には、治療計画について事前に担当医とよく相談をすることが重要です。

 

治療費用:歯列矯正¥880,000

治療期間:2年

治療上のリスク:きちんと保定を行わないと歯列の後戻りを生じることがあります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 歯周病, 矯正歯科

外科的歯内療法による根尖病巣(根尖性歯周炎)の治し方

レントゲン上で根尖部(歯根の先端)の骨が溶けているものを総じて根尖病巣(根尖性歯周炎)と呼んでいます。

この根尖病巣は、歯の内部の細菌感染や腐敗物質が原因です。

根尖病巣(根尖性歯周炎)のある歯の治療の第一選択は、再根管治療です。

以前の根管治療がきちんとされているにもかかわらず根尖病巣が出来ている場合、きちんと治療されていない場合よりも治りにくい傾向があります。

したがって、再根管治療を行う場合、すでにしてある根管治療(根管充填)の状態の良否は、治療計画を立てる際に非常に重要な診断要素となります。

また、再根管治療を行っても治る見込みが少ない場合、或いは再根管治療を行うことで歯根破折やパーフォレーション(穿孔)を生じるリスクが大きい場合には、外科的歯内療法を選択します。

すでに歯根に入っているポストコア(土台)の長さや太さは、再根管治療を行うか外科的歯内療法を行うかのひとつの判断材料になります。ポストコアを外すのは、非常に危険でリスクの高い治療だからです。

 

初診時レントゲン。上顎左右中切歯の根尖には、根尖病巣と思われる黒い骨吸収像を認める(黄⇒)。右側(向かって左)中切歯にはサイナストラクト(フィステル)が存在し、他院にて再根管治療中であった。ファイバーコアを外したであろう跡はオーバーカットされており、歯質が極めて薄くなっている(赤⇒)。歯根破折やパーフォレーションのリスクが高い。

初診時CT画像。両側中切歯の根尖部に根尖病巣を認める(黄⇒)。左側(向かって右)中切歯の根管充填は根尖までしっかりと行われている。右側(向かって左)中切歯は根管治療途中であるため、まず右側中切歯の再根管治療を行うこととした。

 

右側(向かって左)中切歯の根管充填後レントゲン。数回根管拡大・洗浄を行ったにもかかわらず、サイナストラクト(フィステル)が消退しなかったため、根管充填を行い外科的歯内療法に移行することとした。左側(向かって右)中切歯は根管充填が良好なため、再根管治療は行わずに外科的歯内療法を行うこととした。

 

 

根尖掻爬術3か月後レントゲンおよびCT。まず、歯根端切除は行わず、根尖掻爬(病巣摘出)のみを行った。左側(向かって右)中切歯の根尖部の黒い透過像は縮小しほぼ治癒している(赤⇒)。右側(向かって左)中切歯の根尖部透過像は改善が見られない。

 

根尖掻爬術6か月後CT。左側(向かって右)中切歯根尖部の透過像は消失し、根尖病巣は完全に治癒している(赤⇒)。右側(向かって左)中切歯の根尖部透過像はやや拡大し、病巣がやや大きくなっていることが窺える(黄⇒)。右側中切歯のみ歯根端切除・逆根管充填を伴った外科的歯内療法を再度行うこととした。

 

歯根端切除・逆根管充填3か月後。右側(向かって左)中切歯の根尖を3㎜切除し、MTAセメントにて逆根管充填を行た。根尖部の黒い透過像はまだ存在し、骨の再生は不十分。さらに経過観察を続けていく。

 

 

歯根端切除・逆根管充填10か月後レントゲンおよびCT画像。根尖部の黒い透過像が消失し、骨が完全に再生し治癒している(黄⇒)。根尖掻爬だけでは治癒しない根尖病巣が存在している。

 

ポストコアの長さや太さは、再根管治療を行うか否かを決定する際の重要なファクターの一つです。

コアを外す際に歯根破折を起こしたり、削り過ぎにより歯根が薄く脆弱になる或いはパーフォレーション(穿孔)を生じるリスクがあります。

根尖病巣がある歯を再根管治療を行うのか、それとも外科的歯内療法(歯根端切除術および根尖掻爬)を行うのか、正しく診断することが治療を成功させるために重要となるのです。

 

治療費:精密根管治療¥77,000/前歯1歯

根尖掻爬術¥22,000

歯根端切除術・逆根管充填¥88,000

治療期間:1年

治療上のリスク:外科的歯内療法では、術後一時的に疼痛や腫脹、内出血などを生じることがあります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療

上顎前突(出っ歯)の改善には、下顎前歯の治療が必須!~オールセラミッククラウンと部分矯正による上顎前突改善例~

上顎前突(出っ歯)の方は、下顎前歯に問題を抱えているケースが多いです。

このような場合、上顎の前歯だけを後方に引っ込めることは出来ません。

下顎の前歯が上顎の前歯の裏側に強く噛みこんでいるためです。

上顎前突(出っ歯)を改善するためには、まず下顎の前歯の不正を改善する必要があります。

 

初診時口腔内。右側下顎臼歯部(向かって左)は欠損しており、上顎前歯の前突を認める。下顎前歯部はクラウディング(叢生)を呈している。全顎的な治療が必要なケース。

 

治療後口腔内。右側下顎臼歯部はインプラントにて欠損補綴を行った。下顎前歯部はクラウディングの改善のためMTM(部分矯正)を行っている。下顎前歯の歯列が改善したことにより、上顎前歯の前突(出っ歯)が解消されてことが分かる。

 

歯並びを改善する場合、基本的には上顎だけ或いは下顎だけを治療することは難しいことが多いです。

これは、上下の歯列で噛み合わせを構成しているためで、どちらか一方だけを治すと、上下の噛み合わせのバランスが崩れてしまうためです。

上顎前突を治す場合には、基本的に下顎の歯列も治療をする必要があります。

無理に上顎だけで治療を行うと、歯に負担がかかって、被せ物の脱離や破損、歯根破折の原因となります。

治療を行う際には、口腔内全体のバランスを考えた治療計画を考えることが重要なのです。

 

治療費:オールセラミッククラウン/ゴールドクラウン¥132,000/1歯

セラミックインレー/ゴールドインレー¥66,000/1歯

インプラント¥440,000/1本

MTM(部分矯正)¥550,000

治療期間:2年

治療上のリスク:セラミッククラウンは硬いものを食べると欠けることがあります。術後のメンテナンスを怠ると虫歯、歯周病、インプラント周囲炎に罹患することがあります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 審美歯科, 矯正歯科

オールセラミッククラウンによる歯の変色と歯列不正の改善

歯列不正がある場合、治療法の第一選択は歯列矯正です。

健康な歯を削って歯並びをきれいにするセラミック矯正もありますが、健康な歯を削ると将来虫歯や破折を生じるリスクが高くなります。

しかし、すでに歯髄(しずい:歯の神経)が取ってあり、歯の色や歯並びに問題がある場合には、セラミッククラウンによる改善が有効です。

 

治療前口腔内。上顎中切歯の変色および歯並びの改善を希望して来院。左右の中切歯はすでに根管治療がしてあり、茶褐色の変色および舌側(内側)への傾斜ならびに捻転(ねんてん:捻じれ)を認める。オールセラミッククラウンによって、変色と歯列不正の改善を図ることとした。

 

治療後。長年の悩みであった歯の変色及び歯列不正が改善した。上顎前歯部の審美性は、しばしば顔の表情さえも劇的に変化させる。

的確に歯肉圧排ならびに印象採得を行うことによって、非常に適合の良いオールセラミッククラウンが装着された。歯肉との調和も良くとれている。

 

治療計画を立てる際は、最も歯への侵襲が少なく歯が長く持つ方法を検討します。

歯の色や歯並びがきれいになったとしても、治療を行うことで歯の寿命が短くなるような治療計画は得策ではありません。

治療によっては、メリットだけではなくデメリットが存在することがあります。

治療前に担当の先生とよくご相談され、ご自身にとって最適な治療をお受けになることをお勧めいたします。

治療費用:オールセラミッククラウン¥132,000/1歯

治療期間:3週間

治療上のリスク:失活歯(神経の無い歯)やセラミッククラウンは硬いものを噛むと欠けるリスクがあります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 審美歯科

根管治療ははじめが肝心~歯医者は何でもっとよく説明してくれないのか?~

一度根管治療を受けた歯が、しばらくして痛くなるケースは少なくありません。

そのほとんどが、正しく根管治療が行われていないことに起因しています。

根管治療を受けたほとんどの方が、歯が痛むあるいは検診で虫歯が見つかり、虫歯治療の延長で根管治療を受けたと思います。

根管治療が虫歯治療よりも遥かに難易度が高い治療であることを、多くの患者さんはご存じありません。

「虫歯が深いので神経を取らないとダメですね」という一言だけで根管治療を受けることが多いのではないでしょうか?

どのような治療であっても、治療上のリスクや偶発症が存在します。

では、具体的にどのようなリスクや偶発症があるのでしょうか?

当院で根管治療を行う際には、以下のようなリスクおよび偶発症の説明を行い、同意書にサインをいただいています。

 

【根管治療における偶発症】

□治療の過程で、一時的に腫れや痛みが生じることがあります。

□根の中は非常に複雑な形をしており、治療器具の破折や根管内への残存が生じることがあります。

□歯根にクラック(ひび割れ)や大きなパーフォレーション(穿孔)がある場合には、基本的に抜歯の適応になります。

□根管治療を行っても治癒しない場合、外科的歯内療法や抜歯の適応になることがあります。

□ご予約が守られない場合、治療効果が出ないことがあります。

□根管治療終了後は、すみやかに修復処置に移行してください。

□根管治療の治療費は成功報酬ではないため、予後の良否に関わらずご返金する

ことはできません。

 

これらのことを事前に個別にご説明し、質問を受け、ご了承をいただいてから治療を行うようにしています。

歯科医師側からしてみると、上記の内容は当然起こり得るであろうことを前提に根管治療を行っています。

しかし、患者側からしてみれば、治療の結果が良好な場合は問題ないものの、予後が悪く、歯茎が腫れたり抜歯しかないと言われてはじめて根管治療がどのような治療であるかを調べるのではないでしょうか?

 

初診時レントゲン。右下の第一大臼歯に強い痛みを訴えて来院。すでに根管治療および補綴治療が行ってある。根管治療は行われているもの不十分であり、根尖部には黒いレントゲン透過像を認める。

初診時CT画像。根尖部には明らかな黒い根尖病巣を認める(黄⇒)。痛みが強い時の治療は麻酔が効きにくい上、再治療は治療時間がかかり、患者さんはしばしば苦痛を感じる。

 

根管充填時レントゲン。疼痛および頬部の腫脹が改善したため、根管充填を行った。根尖部まで緊密に根管充填されているのが分かる。

根管充填時CT画像。再根管治療は時間がかかるため、その間に炎症が進行し、歯槽骨の吸収が進んでしまった(黄⇒)。患者さんはとても辛い時間を過ごしたであろうことが伺える。

 

根管治療1年後。根尖部のレントゲン透過像はかなり縮小して治癒している。

同CT画像。広がりを見せていた根尖病巣は治癒し、歯槽骨が良好に再生している。

 

医療は極めて専門的であり、医師と患者でもつ情報の非対称性のため、相互理解に大きな乖離が生じています。

これを極力なくし、理解の共有を図ることが、医療を行う上で最も大切なことであると私は考えています。

歯科の保険治療の決定的な欠点は、この相互理解、情報共有を術前に十分に行う時間的余裕が無い点が挙げられます。

歯科と医科では、単位時間当たりに診察治療できる患者数に大きな隔たりがあります。

例えば、内科や耳鼻科、眼科、整形外科などを受診すると、医師が実際に診察治療を行う時間はほんの数分、もしかすると1分にも満たないかもしれません。コメディカルスタッフが多くの診療介助や説明を行っていると思います。

しかし、歯科においては、治療のほとんどは歯科医師にしかできない外科処置(削る、抜く、詰める、被せるなど)であり、一般的な治療を行う場合少なくても15~30程度の時間は必要になります。

この限られた時間では、できる歯科治療には限界があります。

そしてこの時間の中で相互理解を深め、情報共有まで行うことが極めて困難であることは想像に難しくないでしょう。

医療で最も重要なことは、患者と医師の相互理解ではないでしょうか。

 

治療費用:精密根管治療¥99,000/1歯

治療期間:1カ月

治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。

デンタルリテラシーを高めるブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療

差し歯の付け根の変色の治療~ブラックマージンが気になったら~

歯肉は年齢とともに徐々に退縮をしていきます。

若い時に入れた前歯のセラミッククラウンも、入れた当時はきれいでも、歯肉が退縮を起こすことで徐々に歯根が露出し、審美的な問題を生じるようになります。

虫歯による変色でなければ、緊急性がないので必ず治療しなければならないわけではありません。

しかし、上顎前歯はやはり人目に付きやすいため、再治療を希望される方は多いでしょう。

 

治療前。メタルセラミッククラウンを入れてからかなり時間が経っているため、歯肉の退縮が起こり審美的に問題を生じている(ブラックマージン)。人目を気にせず歯を見せて笑うことは出来ない。

 

治療後。オールセラミッククラウンにて再治療を行った。歯肉との調和もとれ、自然な仕上がりになっている。

 

より綺麗な状態を長持ちさせる秘訣は、セラミック治療の前に正しいブラッシングの方法を身につけ、歯周病を改善し健康な歯肉の状態にすることです。

歯肉の状態が良くないままセラミックを入れると、治療後早期に歯肉の退縮が起こる可能性があります。

また、精密でフィットの良いセラミッククラウンを製作するには、的確な歯肉圧排とシリコンでの精密な印象採得(型取り)を行うことも重要です。

前歯の審美的な改善をお考えの方は、経験豊富な歯科医院でご相談されると良いでしょう。

治療費:オールセラミッククラウン¥132,000/1歯

治療期間:3週間

治療上のリスク:セラミックは硬いものを噛むと破折するリスクがあります。また、歯ぎしりや食いしばりのある方もセラミックが破折するリスクがあります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 審美歯科

外傷による歯冠歯根破折歯の外科的挺出による保存法

上顎前歯は、外傷で最も受傷頻度が多い部位です。

スポーツや転倒、事故により、顔面および前歯部を強打することで、上顎前歯の歯冠・歯根の破折や脱臼を生じるケースは非常に多いです。

歯の脱臼では、可能な限り早期に再植・固定をすることで歯の保存を図ります。しかしながら、完全脱臼(完全に抜け落ちてしまったもの)では将来歯根吸収を起こす可能性が極めて高いです。

亜脱臼(歯の位置異常、ずれ)では、歯根膜の血流が完全に途絶えないため、将来的な歯根吸収の可能性はあるものの、比較的良好に経過するものも少なくありません。

脱臼に対して、歯冠や歯根の破折の頻度はとても多いです。

スポーツ、転倒、事故以外にも、誤ってお箸やスプーンを噛む、お子さんの頭がぶつかった等、日常生活で受傷することもあります。

 

歯冠破折では、その受傷範囲によって治療法が異なります。

小さく欠けた程度であればコンポジットレジンを充填するだけで問題ないことが多いでしょう。審美的に問題を生じるようであれば補綴治療(ほてつ:被せること)を行うこともあります。

歯髄(神経)に達するものでは根管治療および補綴治療を行うことが一般的です。

 

一方、歯根破折の場合には、抜歯が必要になることが少なくありません。

歯根が歯槽骨の中で破折している場合、通常補綴治療を行うことは出来ません。

歯肉や歯槽骨などの歯周組織を健全に保つためには、3㎜程度健康な歯質が歯槽骨頂部よりも出ていなければならないためです。(専門的にはバイオロジック・ウィズ:生物学的幅径という。生物学的幅径は、約1㎜の上皮性付着、結合組織性付着、歯肉溝の合計3㎜で構成される)

生物学的幅径が確保されていない場合、歯や歯肉の痛みや違和感、咬合痛、歯肉の腫脹や出血などの炎症が生じます。

このため、歯根破折では歯の保存が困難になります。

しかしながら、そのような破折歯でも生物学的幅径を確保する方法が3つあります。

矯正的挺出、外科的挺出、歯冠長延長術です。

矯正的挺出は、矯正力で歯根を骨から引っ張り出す方法であるのに対し、外科的挺出は歯を脱臼させて骨から引き出す方法です。

外科的挺出に比べ矯正的挺出の方がマイルドで歯に優しく、歯根吸収のリスクがほとんどないため、可能であれば矯正的提出を図るのが一般的です。

ただし、条件によっては矯正的挺出を図ることが困難な場合もあります。

この場合は、次善の策として外科的提出を図ります。

歯冠延長術は、歯槽骨を削ることで生物学的幅径を確保する方法であり、術後に歯肉の退縮が必ず起こるため、主に臼歯部で行われます。審美性の要求される前歯部での適用には不向きであるでしょう。

 

初診時口腔内。転倒により左右の上顎中切歯2本を強打して歯冠歯根破折を生じ、近医にて応急処置を受けた。歯肉からの悪臭、疼痛および審美障害を訴え来院。前歯部の噛み合わせが深く(過蓋咬合)、下顎前歯はほとんど見えない。このようなケースでは、矯正装置を装着することが困難なため、矯正的挺出を行うことは難しい。

 

初診時レントゲンおよびCT画像。右側中切歯(向かって右)は歯髄に近接した白い充填物を認める。根管治療後、補綴治療を行うこととした。左側中切歯(向かって右)は歯槽骨にまで及ぶ歯根破折を認め(黄⇒)、通常であれば矯正的挺出あるいは抜歯のケース。過蓋咬合で矯正的挺出が行えない為、根管治療を行った上で外科的挺出を図り歯牙を保存することとした。

 

左側中切歯の根管治療時。根尖部まで緊密にしっかりと根管充填されている。

 

外科的挺出直後。歯根を約3㎜ほど外科的に歯槽骨から引き出した(黄⇒)。歯根が歯槽骨から脱臼されているため、歯根周囲は黒い隙間が確認できる(赤⇒)。歯の動揺が強いため、隣在歯と接着剤で固定を図る。

 

外科的挺出2か月後。歯槽骨の再生により、歯根周囲の黒いレントゲン透過像が消失している。歯の動揺も落ち着いた。

 

右側(向かって左)中切歯の根管治療後。外科的挺出を図った左側(向かって右)中切歯の歯根周囲に骨の再生を認める。歯根の吸収は認められない。

 

治療後口腔内。オールセラミッククラウンによる審美修復を行った。下顎前歯部はクラウディングが存在していたため、噛み合わせの改善を目的として部分矯正を行た。抜歯をせずに治療できたことは、患者さんにとって非常に有益であろう。

 

外傷歯を保存できるか否かは、歯や歯周組織、咬合等の条件に左右されます。

歯根が短い場合には、挺出して歯牙を保存することは出来ません。

外傷で歯を受傷したした場合には、なるべく早く歯科医院を受診し、治療方針を相談することをお勧めします。

治療費用:精密根管治療¥77,000/1歯

ファイバーコア¥22,000/1歯

オールセラミッククラウン¥132,000/1歯

部分矯正¥550,000

治療期間:11か月

治療上のリスク:外科的挺出は将来歯根吸収を起こすリスクがあります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 審美歯科, 根管治療, 矯正歯科

上顎大臼歯の根管治療を保険診療で受けると、予後不良となる確率が高い!~精密根管治療による根尖病巣と歯性上顎洞炎の治癒例~

根管治療は、歯科治療の中でも最も難しい治療のひとつです。

特に上顎大臼歯の根管治療は非常に難易度が高い治療です。

通常、歯根が2~3本存在し、根管(神経の入った管)が3~4本存在しています。

歯根や根管の湾曲が強いものも少なくなく、ファイル(細い治療器具)の破折やパーフォレーション(穿孔;歯根に穴を開けてしまう)のリスクが高い歯が多いのです。

それに加え、上顎臼歯部は視認性と器具の到達性が悪く、患者さんの開口量によっては器具が下顎の歯に当たり治療が困難な場合も少なくありません。

保険診療の根管治療は、治療の難易度に対して保険点数が極めて低く、治療に時間と労力を割くことができませんし、コストに見合った材料や器具しか使うことが出来ません。

その結果、根管治療はなかなか進まず半年一年と治療をダラダラ続け、根管治療した歯の予後が悪く治療のやり直しを繰り返すこととなります。

 

初診時レントゲン。右側上顎第一大臼歯の疼痛と歯茎の腫れを主訴に来院。コンポジットレジンによって、歯髄(しずい)に近接した虫歯治療がされている。

初診時CT画像。根尖部(こんせんぶ;歯根の先端)には根尖病巣による黒く丸いレントゲン透過像を認める(黄⇒)。根尖病巣が上顎洞に近接しているため、上顎洞の内部に白いレントゲン不透過性の炎症所見を認める(赤⇒)。歯髄壊死による根尖病巣(慢性根尖性歯周炎)および歯性上顎洞炎と診断し、根管治療を行うこととした。このようなケースは、根管治療がうまくいかなければ上顎洞炎が増悪し、抜歯に至る。

 

根管充填後レントゲン。歯の痛みおよび歯茎の腫れが改善したため、根管充填を行った。4つの根管に根管充填されているのが分かる。

根管充填後CT画像。根尖部までしっかりと白い薬が充填されているのが分かる。根尖病巣による根尖部の黒いレントゲン透過像は縮小してきており(黄⇒)、上顎洞の炎症も治癒してきているのが分かる(赤⇒)。

 

治療1年後。何も症状はなく順調に経過している。

治療1年後CT画像。根尖部にあった黒いレントゲン透過像および上顎洞内の白いレントゲン不透過像は消失し、根尖病巣および歯性上顎洞炎は完全に治癒している。保険治療では決してこのようにはいかない。

 

根管治療は、一番初めの治療(抜髄;ばつずい、神経を取ること)が最も成功率が高く、再治療(治療のやり直し)は難易度が高く成功率が顕著に低下します。

したがって、根管治療を受ける際は、最初から保険ではなく自費での治療を受けるべきで、その方が治療後の歯の予後は良く、長くご自身の歯で過ごすことが出来るでしょう。

自費での治療は確かにイニシャルコストがかかりますが、歯がダメになって将来抜歯になり、ブリッジやインプラントになることを考えると、トータルコストは抑えることが出来ます。

普段は気付きもしませんが、何よりもご自身の歯で不自由なく食べられることは、とても幸せなことではないでしょうか?

治療費用:精密根管治療(大臼歯)¥99,000

ファイバーコア¥22,000

オールセラミッククラウン¥132,000

治療期間:3か月

治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。神経を失った歯は将来歯根破折を生じるリスクがあります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療

歯髄壊死による重度歯性上顎洞炎の治癒例~精密に根管治療を行う重要性~

上顎の臼歯部の上方には、上顎洞という副鼻腔が存在しています。

日本人は上顎洞が広く、特に上顎大臼歯の根尖(歯根の先端)は上顎洞に近接あるいは上顎洞に突出しているケースが多く、根尖病巣(歯根の先端部の炎症:慢性根尖性歯周炎)を生じると歯性上顎洞炎を併発するリスクが非常に高いです。

根尖病巣を生じる原因は、主に虫歯や虫歯治療から生じた歯髄炎、歯髄壊死、不適切な根管治療などです。

上顎大臼歯は非常に複雑な歯根形態をしており、また視野や器具の操作性が悪いため、根管治療の難易度が最も高い部位です。

根管治療の成否は、上顎洞炎の罹患や歯の保存を決定的に左右します。

 

我が国の保険治療での根管治療の成功率は30~50%ほどとされていますので、保険治療で難しい上顎大臼歯部の根管治療を受けた場合、歯性上顎洞炎を生じるリスクは高いと考えられます。

根管治療は、初回治療の成功率が高いものの、再治療では成功率は大幅に低下します。

このことから、イニシャルコストはかかりますが、大臼歯特に上顎の大臼歯の根管治療は最初から自費治療でお受けになるのが賢明だと思います。

 

初診時レントゲン。右側第一大臼歯の痛みと歯茎の腫れを主訴に来院。右側顔面の疼痛および後鼻漏、鼻閉を訴えていた。当該歯は虫歯治療がしてあり、大きなコンポジットレジンが歯髄付近まで充填されていた。根尖部には黒いレントゲン透過像を認める。

 

初診時CT画像。当該歯の根尖部には根尖病巣と思われる黒いレントゲン透過像(赤⇒)を認める。上顎洞は上方まで白く不透過性が亢進しているのが分かる(黄⇒)。虫歯治療から生じた慢性根尖性歯周炎から継発した歯性上顎洞炎と診断し、根管治療をを行うこととした。

 

根管治療後レントゲン。根尖部まで緊密に根管充填されているのが分かる。臨床症状はすべて改善した。

 

根管充填後CT画像。根管治療を開始して一月後には上顎洞内部は正常な透過性を認め(黄⇒)、顕著な上顎洞炎の改善を認める。根尖病巣は縮小している(赤⇒)。

 

根管治療後1年。根尖部のレントゲン透過像は完全に消失し、根尖病巣は治癒している。

 

根管治療後1年のCT画像。初診時に認めた上顎洞内部の不透過性が改善し、正常な黒い含気腔を呈する(黄⇒)。根尖病巣も完全に治癒し、黒い透過像は消失し、骨の良好な再生を認める(赤⇒)。

 

歯性上顎洞炎は、歯を正しく治療すれば治癒することは多いです。

しかしながら、鼻腔と副鼻腔を繋げる自然孔が閉塞していたり、鼻中隔の湾曲などにより鼻腔の換気が悪いようなケースでは、歯の治療だけでは改善しないこともあります。

そのようなケースでは、耳鼻科との連携治療が必要になります。

いずれにしても、上顎洞炎の原因が歯にあるのか、鼻にあるのかを正しく診断することが重要となります。

治療費用:精密根管治療(大臼歯)¥99,000

ファイバーコア¥22,000

オールセラミッククラウン¥132,000

治療期間:2か月

治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。病態によっては耳鼻科との連携が必要になります。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療

失活歯の変色による前歯の審美障害~オールセラミッククラウンによる審美修復~

虫歯や歯の外傷によって歯の神経を失うと、歯の色は変色を起こします。

この変色は、しばしば審美的に大きな障害となります。

特に上顎の前歯は人目に付きやすく目立つため、口元を気にして笑うことが出来ないこともあり、精神的にもストレスを感じている方も少なくありません。

失活歯(神経を失った歯)の変色の改善方法は以下の2通りの方法があります。

①歯の漂白(ウォーキングブリーチ)

②セラミッククラウンによる審美修復

歯の漂白が適応になる症例は、歯の実質欠損が少なく(大きく欠けたり詰めていない)、歯の原型をとどめているケースで、なおかつ歯にクラック(ひび割れ)が無いケースに限られます。

現実的には、歯の神経が無い歯の場合、大きく歯の形態を失っているケースが大半です。

そのような場合には、セラミッククラウンによる審美修復が適応になります。

 

初診時口腔内。上顎前歯部の審美的な改善を主訴に来院。上顎前歯3本の変色が強く、また歯の実質欠損も大きい。セラミッククラウンによる審美修復が適応と診断した。

 

治療後。変色の強い上顎前歯3本をオールセラミッククラウンによって修復した。色合い、形態ともに自然に仕上がっており、明るく美しい口元になった。

 

上顎前歯の審美性は、ヒトの表情をも左右する影響力を持っています。

ベストな治療の方法は個々人によって異なりますが、審美性、機能性、長期安定性のバランスが取れた方法の選択が最良な結果となるでしょう。

歯の変色でお悩みの方は、一度担当の先生にご相談してみると良いでしょう。

 

治療費:オールセラミッククラウン¥132,000/1歯

仮歯¥5,500/1歯

治療期間:3週間

治療におけるリスク:硬いものや噛み応えのあるものを食べると、欠けることがあります。また、適切なセルフケアを行わないと、虫歯や歯周病に罹患します。

デンタルリテラシーを高めるためのブログはこちら

神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 審美歯科

診療内容

アクセス

中央本線神田駅(東京都) 南口から徒歩3分
総武線快速新日本橋駅 2番出口から徒歩1分
銀座線 三越前駅 A8出口から徒歩3分
Google Map